噛めば噛むほど
観賞手段:テレビ、CS/BS/ケーブル、BD
氷菓はこのご時世には珍しく、比較的ゆっくりとしたテンポで話が進行し、画面と台詞の端々に多くの情報がつめ込まれた作品です。
原作は米澤穂信氏の古典部シリーズ
「日常の謎」というミステリーをテーマとしつつも、青春群像劇の一面をもった作品です。
小説自体は10年以上前のものですが、それでもここ最近のアニメには珍しく、登場人物がみんな頭が良さそうな会話をするというか、インテリっぽいというか、そんな特徴もあります。
ミステリー小説をいかにして映像化するか、しかも日常の謎という地味な主題、さらに主人公の折木奉太郎は安楽椅子探偵ときた。
普通だったらこんなタイプの小説をアニメにしようなんて思いませんよ
アニメ「氷菓」ではその解決策として、作画だけでなくCGを駆使した様々な演出が為されています。視覚的にわかりやすく伝えようとする試みです。
伏線もさりげなく描かれているので、ものすごく勘が鋭くて、画面の端々まで凝視している人なら、事件が解決される話数の前に謎を解き明かすことができるかと思いますが、一度見てからもう一度視聴するとそういった伏線に気づけるかと思います。
ストーリーは一見すると奉太郎が謎を解くことがメインだと思われがちですが、日常の謎を解く過程でのキャラクターの葛藤と成長がこの作品の肝になっているかと思います。ほぼ全ての謎には「苦さ」が含まれています。
このアニメで一番の壁となるのは、そういった「見方」に頭を切り替えられるかどうかです。普通、アニメは小説と違って視聴者がかなり受動的でもOKなのですが、「氷菓」は能動的に見ていかないとストーリーの核心から置いて行かれます。
本作で触れなければならないのは背景の美しさと音楽の面白さです。
ロケーションが良いとでも言うべきなのか、印象的な景色が多いです。
音楽はかの田中公平先生が担当されていますが、本当に面白くてユニークな曲が多いです。
なかなかお目にかかれないジャンルということでも貴重な作品ですが、緻密な描写と演出、ユニークな音楽なども楽しませてくれます。
最終話の「ところで、お前が諦めた経営的戦略眼についてだが~」という奉太郎の台詞がありますが、本作では主人公の恋愛に関する考えというのはたったこの一言、しかも"妄想の中"だけです。しかし、この一言は素晴らしく洒落ていて、最後までこの作品らしさがあふれていて良かったです。
ミステリーを探している人には勧めませんが、少し苦さのある青春群像劇を探している人にはおすすめです
- ストーリー
- 4.0
- 作画
- 5.0
- キャラクター
- 4.5
- 音楽
- 5.0
- オリジナリティ
- 4.5
- 演出
- 4.5
- 声優
- 4.5
- 歌
- 5.0
満足度
4.5
いいね(3)
2015-01-25 05:13:58