坂本夏樹さんの評価レビュー

ダーク・ファンタジー・シーンの担い手
メイドインアビス。
かわいい絵柄と衝撃的な展開のギャップを、
鮮やかな色彩で彩る、その美しさが
多くの人を惹きつける理由なのではないでしょうか。

音楽の常軌を逸する作り込みの深さも
毎回話題となりますね。
OP/EDテーマ曲はもちろん、サントラも人気が高く、
LP版はプレミア価格で取引されているほど。
そんな中でも、２期OPテーマ「かたち」を僕は推したい！

歌唱がメインとなる音楽には、
メロディーの美しさと同様に
歌詞の響きの美しさが存在します。
単純に、メロディーの音数と合致するように
原作から引用した言葉を当てはめる、
だけでは、まず心地よく耳には届きません。
簡単に言うと、
母音と子音の組み合わせの繋がりが産む
言葉のリズム、これをコントロールする必要があります。
しかも、その言葉のリズムの更なる連なりに
意味を持たせて、テーマを表現する、
こんな縛りに縛られたハード・モードの中から
名作の歌詞は産み出されているのです。

そんな耳で、目で、口で、
「かたち」の歌詞を読んでみてください。
まず、言葉数の少なさに驚くはずです。
アニソンに限らずに見てみても、
圧倒的に言葉数が少ないんです。
なのに、１番だけで完璧に
「烈日の黄金郷」を表しきれている。
この研ぎ澄まされた言葉の硬度が放つ輝きに
美しさを感じずにはいられません。

そしてこの輝きを音に変換して耳に届けてくれる
安月名 莉子さんの歌唱。
倍音や音響的という意味の
アコースティックな空気感を纏いつつも、
まっすぐに突き抜ける爽快感のある歌声は、
期待はあるけど不安もあって、
ちょっと及び腰になってしまう第一歩を
力強く後押ししてくれるようで、
まさに物語の幕開けに相応しい。

歌詞を読みながら曲を聴くことで
リコさん隊の心情により深く同調でき、
物語が、また違った響きで心を震わせるはずです。