作品としては、CG技術が素晴らしかったです。
布や髪のなびき、人物の表情などがCGとは思えないほどでした。
また、視聴者に様々な種類の疑問を投げかけてくるという面でも、
視聴してよかったと言える作品です。
後味がモシャモシャしますが。
そとの次元から現れた異方の存在・ヤハクィザシュニナは、
人類に対し、オーバーテクノロジーのアイテムを差し出して、
その結果もたらされるであろう著しい発展や進化を促し、
それに伴って生じる膨大な情報を得ようとする。
しかしやがて、異方からすれば取るに足らない存在である人類が、
自分にもたらしたものに気づくのです。
これが遅かったですね。
初めは無機質なもののようであったザシュニナが、
主人公の真道とすごすうちに人間味を帯びてくるところは、
もっと丁寧に尺をとって描かれたらよかったのにと感じました。
1話から俗に言うBLに発展しそうな描写がちらほらありましたが、
BLに関係なく、心の機微をつぶさに描いてほしかったかな。
最終回は、どうしてここまでされないとならないのかと思い、
いたたまれなくなりました。脚本家の狙いでしょうが。
ストーリイ展開は、後半軸がブレた印象。
軸がブレて違うSFになってそのまま終わった感じです。
沙羅花は可愛らしいし、言いたいことも判る。
ありのままの人類を愛しているので余計な手を加えてほしくない。
ザシュニナはお節介もいいところなので早く異方に帰ってほしい。
気持ちは判るし、沙羅花がストーリイの本筋に大きく関わって
くることは、人類側の交渉官であることからも推測されましたが、
そうか、こういう展開か、と思わされました。
このあたりはストーリイとしては面白いのですが。
今作品の本題としては違う気がしました。
真道は、0話がいちばんよかったかな……
序盤がよかった。かれが悪いわけじゃないんですけどね。
なぜ、出会いから懇意にしていたザシュニナに
手のひらを返すようなことをして、結果命を落としたのか。
納得のいかない部分ではあります。
沙羅花に感化されていたのでしょうけども。
あと、最終話で死んでいるのに、死んだあとにスマートフォンの
動画に子供を抱いて映っているのは、時間軸が違う世界だから
でしょうか。でも部下の花森くんが「ぼくが育てた」と
言っていますし、現実世界で16年ぶんの年を取っていますよね。
このへん、整理しないとよく判らない。
結局、この『正解するカド』は、人類が主役の話ではなく、
異方存在にウェイトがあり、異方存在が人類をどうにかしようとし、
あるいは助ける、という作品になっているため、
視聴者の評価が割れるのではないかと予想します。
期待や予想を裏切られるのも作品に触れる醍醐味ですが、
自分が飲み込むには大きいものや味の違うものは避けられる、
という現実があるのではないでしょうか。
総評では観てよかったと思っていますが、
最終話だけは繰り返して観たいとは思えません。