まず全体的に淡々と流れすぎな印象がありました。
美術は丁寧で綺麗だし、作画も整っていましたが、
肝心の中身までがそれこそサラッと流れていくという
感じを受けました。
アニメ化にあたり強調された百合展開ですら
サラッとしているのがもったいない。
主人公トァンの心酔していたカリスマ、ミァハは、
重要なセリフを言いまくるキーマンなのに、
そのミァハも危険思想の不思議ちゃんに留まっている。
原作を読んでストーリイを知っている身からすると、
とても歯がゆく思いました。
説明的なモノローグが多いので、ところどころ退屈だった
印象もあります。これは演出がよろしくないのかなぁ。
Project-Itoh第1弾目の『屍者の帝国』のほうが、
映画作品として完成度の高い素晴らしいものになっていたと
比べざるを得ません。
納得できないのは、最後のいちばん重要な展開です。
ここまであっさりしすぎていて、原作を知っていないと
なにが起きているのかを判らない人がたくさん出るんじゃ
ないだろうかと、ファンとしては心配になります。
あと、トァンに思いを語らせなくても、
何度も夢に見る描写などで見る側に判らせることが
できたのではないだろうかとも感じました。
終盤の展開のすごさは、原作には遠く及ばないです。
期待していただけに、残念な点が目立ちました。
『屍者の帝国』、『ハーモニー』と観てきましたが、
伊藤計劃さんは人間の魂について深く考察し、
こだわりをお持ちだったのだろうと感じました。
今作も魂のありようが重要なポイントになっていますので。
今作は、決して嫌いではないし駄作とも思わないけれど、
前作のように何度も観たくなる作品ではなかったです。
EGOISTの主題歌は切ない色がとても好みでした。