YOU44さんの評価レビュー

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永遠の「刹那」

観賞手段:ビデオ/DVD
ちょっと捻って想像してみた。
1年後「のんのんびより」の連中は
どうしているか。
卓は卒業して高校生。
新入生はいるんだろうか。
駐在所のはるかか。でも駐在さんって
転勤も多そうだ。
2年後はどうだろう。蛍が中学生になっても
そうは変わらなそう。でも小鞠が卒業する。
小鞠が街場の高校へ通って
どういう気持ちでいるだろうと想像する。
一穂も駄菓子屋もこのみも同じこと経験してるから
小鞠も話には聞いているだろう。
卓と一緒に通えるし。
そんなことより分校が人数が少なくて
閉校になっているかも知れない。
何より小鞠が抜ければ4人の関係性が
それまでと違ってしまう

さらにそれから数年後、
夏海が街のゲーセンでたむろってたり
小鞠に彼氏が出来たり
蛍が東京の大学へ行ったり
はたまた誰かが結婚して子どもに分校の話をしたり…
そんなこと想像すると無性に胸が苦しくなる。
この苦しさは「のんのんびより」が
あまりに素晴らしいことの裏返し。
過去や未来を妄想するのは
精神衛生上良くないのは知ってる。
「前後際断」と禅でも言っている

井上陽水の初期の名曲に
「いつのまにか少女は」というのがある。
「きみはどこで生まれたの 育ってきたの
きみは静かに 音もたてずに 大人になった」
「いつのまにか 愛を使うことを知り
しらずしらず 恋と遊ぶことを知る」
そしてこう続くのだ。
「だけど春の短かさを 誰もしらない」
「春の短さ」の中に4人はいる

青春映画の金字塔は
『草原の輝き』だと決めている。
題名はワーズワースの詩
「草原の輝き 花の栄光 
それらは再び還らずとも嘆くなかれ 
その奥に秘められたる力を見い出さん」
4人は今まさに
この「草原の輝き」の中にいる

4人が手を繋いで草むらを乗り越えたり
木陰で居眠りをしたり
橋から川に飛び降りたり
一緒にこたつに入って笑い合っている時
その純真さに思わず微笑んでしまう。
それだけにしておけば良いのだが
前述のようにその後のこと、楽園の外に
思いを巡らして懊悩する。
無常観とはこういうことを言うのだと思う。

そしてふと気づく。
この「感傷」を知って観るのと
知らないで観るのとで景色が違って見えることに。
「感傷」がこの作品を人生論の領域に運ぶ。
「感傷」が今この瞬間の幸せを
未来と過去とを切り離して
純粋に味わおうとさせる。
「はかなげ」だからこそ
何気ない日常が尊く、優しく愛おしい。
この逆説に気づくのだ

センチメンタリズムの一歩手前で見る風景が
「永遠」を感じさせる。
甘酸っぱものが胸の中を流れる。
至福と言ってもいい。
アニメの名作ってこういうことする。
忘れていたもの、忘れてはいけないことを
思い出させる。傑作に巡り会えた喜びってある

第6話、珍しく夏海と蛍の話で
ほっこりして好き。
第10話は駄菓子屋とれんげの話。涙が出る。
「順繰り」で「おたがいさま」なのだ。
「何回も繰り返す そのたび涙する」
「何回だって花は咲くって教えてくれた」(のんすとっぷ)
OPでもそう歌ってる。
最終話の縁側での長回しは
『ハルヒ』長門のそれと並ぶ名シーンだ
YOU44
YOU44
ストーリー
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作画
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キャラクター
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音楽
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オリジナリティ
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演出
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声優
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満足度 5.0
いいね(0) 2021-03-07 13:05:53

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