アニメの可能性を感じさせてくれた希有な良作そして問題作
観賞手段:テレビ
2013年春アニメ一番の問題作。放映当初から「全編ロトスコープ」という制作手法がいろいろ話題となり、賛否両論巻き起こった。しかし、結果としてこの手法は、本作が持つリアリズムを極限まで生かした手法となった。群馬県桐生市という実在の地方を舞台とし、実写的なタッチで描かれる背景。ロトスコープで描かれた、妙にリアリティのあるキャラクター。これまでに見たことがない世界がそこに広がって、本作が元々持っていた毒々しいまでのリアリティと融合することで、得も言われぬ世界観を醸し出していた。日和見的なアニメ作品が多い中で、本作はその手法からアニメの可能性を広げてくれた野心的な作品ということができる。
こうしたアニメーションの制作手法以上に衝撃的なのは、何と言っても、本作のストーリーだろう。青春時代のよくある閉塞感とそれを打ち破りたい破壊衝動。それが主人公春日と、仲村さんとのゆがんだ関係によって増幅されていく。キャラクターの描き方も非常に丁寧だし、声優陣もそれに応えるようないい仕事をしていた。毎回揺れ動く、春日と、ヒロインの佐伯さん、仲村さんの3人の心情が、画面から声の演技から痛いほどに伝わってくる。その根底には、ボードレールの「惡の華」が通奏低音的に流れており、作品の悲劇性を助長する。
今年2013年を代表する良作、そして問題作であったことは間違いない。日本アニメの歴史に残る作品となるだろう。
- ストーリー
- 5.0
- 作画
- 5.0
- キャラクター
- 4.5
- 音楽
- 4.5
- オリジナリティ
- 5.0
- 演出
- 5.0
- 声優
- 5.0
- 歌
- 5.0
満足度
5.0
いいね(1)
2013-07-02 15:23:51