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MMORPG(大規模オンラインゲーム)の世界を舞台にした、橙乃ままれ氏作による人気ファンタジー小説を、NHK「Eテレ」がアニメーション化した「ログ・ホライズン」。ある日突然、“剣と魔法の世界”をモチーフとした老舗オンラインゲーム「エルダー・テイル」に閉じ込められしまった3万人の日本人ユーザーたち。
一匹狼を自負していた主人公の大学院生・シロエが、旧友の直継や美少女アサシンのアカツキら仲間とギルド「ログ・ホライズン」を”アキバ”で立ち上げ、混沌とした世界を変えるべく奔走する姿をダイナミックに描きます。
そんな話題作を手がける石平信司監督とNHKエンタープライズ(NEP)の苗代憲一郎プロデューサーにインタビューを敢行。制作現場の裏側に迫ってきました。
―――まずは、アニメ化に至るまでの経緯を教えていただけますか?
苗代P:さかのぼること2年以上前になりますが、当時はまだ原作も4巻ほどしか出ていなかった頃ですね。弊社の企画プロジェクトの人間が、本屋で平積みされていた「ログ・ホライズン」を見つけたのがきっかけです。橙乃ままれ先生が投稿型のWEBサイトで連載していた小説が、ネット発の超話題作として出版されていて、それに目をとめたと。Eテレのアニメ企画としてもティーン層に刺さるものを狙っていて、これはスポーツものや青春ものと毛色が違って惹かれるなと。NHKサイドもゲームやファンタジーという魅力的な題材でドラマもある、ということでゴーサインが出たので、アニメ化に至ったという感じですね。
―――そこで石平監督にオファーされたわけですね。 苗代P:はい。人選にあたっては「マクロス」シリーズで知られているプロダクションのサテライトさんと相談をしました。NEP側もサテライトさん側も石平監督には注目をしていたので、実現したのは幸運だと思っています。
―――石平監督は原作をご存知だったのですか? 石平監督:実際は、オファーがある前に「読んどいてくれ」と渡されて。「読んでくれ」ということは、たいがい何かある(笑)。企画が結実しないことも多いけれど、読んでいる間にオファーがあったという感じですね。
―――読んでみての感想はいかがでしたか?
石平監督:もともとゲームが好きですし、誰だって「ゲームの中の世界に行ってみたらどうなるだろう?」って想像するもの。これは、行ってみたら食べ物の味がしないとか細かい設定に引き込まれて。世界観の説明を読むだけで楽しかったですね。トウヤとミノリの話が出てきたところあたりから、抜け出せなくなって一気に読みました。
―――人気原作のアニメーション化って、やはりプレッシャーが大きいのでしょうか? 石平監督:「FAIRY TAIL」の時もそうなんですが、テレビアニメにするときは、自分が面白いと思ったものを知らない人に刺さるよう考えるところから始まるので、実はプレッシャーというのはあまりないんですよね。
―――ゲームをテーマにした小説をアニメーション化するという、そのメディアミックス感が面白いですよね。ゲームのコマンド操作なども、アニメならではの表現でした。石平監督がアニメーション化する際に特に気をつけたこととは? 石平監督:ゲームをテーマにしたマンガやアニメって、どんどんゲーム要素を排除していく方向が多いと思うんですね。好きなゲームがアニメ化された時にストーリーなど内容が変わっているのはよしとして、“ヒットポイント”や“マジックポイント”のようなギミックがない世界って寂しい。ストーリーやキャラクターはゲームに忠実でも、アイテムの使い方やゲームらしさが排除されていると、それは「俺の知ってるゲームじゃないぞ」と感じてしまう。なので古くからのゲーム好きとしては、原作の「ログ・ホライズン」がそういった設定を大切にしてくれているところがうれしかったですね。
―――MMORPGをやってる人間にはたまらないですよね。 石平監督:そうですね。コマンド画面やステータス画面は、ゲームデザイナーの桝田省治さん(「リンダキューブアゲイン」「俺の屍を越えてゆけ」で有名)が原作の監修もされているんですが、アニメの方でもいろいろとアドバイスをもらっています。
―――ちなみに石平監督は、どんなゲームがお好きなのですか? 石平監督:実はRPG自体はそんなに好きじゃなくて(笑)。今はもっぱら撃ったりどついたりのアクションですね。プレイする時間がなくなってしまったのがそ の理由ですが、小学校高学年くらいの頃は「ドラクエ」(ドラゴンクエスト)や「FF」(Final Fantasy)の初期の作品はやっていましたね。当時は出るゲームすべてに手を出していた感じ。昔のゲームになればなるほど、面倒くさいことが多いですよ。でもMMOもそういう面倒くささがあって、「それを乗り越えている俺がカッコイイ!」みたいなウットリ感がある(笑)。
―――昔の王道ゲームといえば、主人公は“勇者”でしたよね。「ログ・ホライズン」の主人公シロエはいわゆる勇者ではなく、どちらかというと今まで脇役に徹することが多かった“賢者”タイプ。そこも新鮮です。 石平監督:それもこの作品の面白いところですよね。従来だとトウヤ(の戦士タイプ)が主役なわけですよ。それを支える賢者が主人公なので、情熱や力押しでいく作品ではないことが最初から提示されている。いわゆる少年向けの王道アニメの主人公ではないので、ストーリーの展開も王道にはならないであろうと想像ができる。世界のルール作りやコミュニティ作りがメインになっていくのが、また意外で面白いですよね。死ぬことすらできなくて、永遠とゲームの中に閉じ込め られてというひどい状況の中、コミュニティを作り上げていくという意外性。ゲームを題材にしながらも、自分たちが住む町を改善していかなければという社会派ドラマの側面もある。この人物がどうなっていくんだろうと想像させてくれる、そういう登場人物の掘り下げ方も個人的にはツボでしたね。